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生活費控除

生活費控除とは、被害者が死亡した場合、生存していれば必要であった生活費として食費、被服費、光熱費等の支払を死亡により免れることになり、その分を損益相殺の算定にあたり被害者本人の死亡後の生活費を控除します。

実際に支出を免れた生活費の金額をここに認定することは難しいため、実務上においては、被害者の所得、生活状況、被扶養者の有無・人数、性別等を勘案し、収入の30%ないし50%をもってこれにあたるものとみて、控除することとしています。

赤い本における基準について

一家の支柱

被扶養者1人の場合 40%

被扶養者2人以上の場合 30%

女性30%

年少の女性の場合、基礎収入として死亡時の賃金サンセスの全労働者・学歴計・全年齢平均賃金を採用する場合には、45%程度とされています。

男性50%

問題となる場合(双方の主張や立証等により結論が動く)

男性単身者が親権を有しない子や高齢の親に養育費等を支払っていた場合

一家の支柱に準じて、50%が下回る割合が認定されることもあります。

高収入や共稼ぎの女性の場合

30%よりも高い割合が認定されることもあります。

年少女子について基礎収入が全労働者平均賃金とされる場合

45%とする裁判例がほとんどですが、40%以下とするものもあります。

年金逸失利益の場合

収入の大部分が生活費として支出されるものであるとして、通常よりも高い控除率とする裁判例も多く、おおむね50%から80%の範囲で認定されています。

収入が少額で支出の方が多額であった場合

稼働逸失利益と年金逸失利益のいずれについても、収入が少額で、預貯金の取り崩しや親族からの援助等も併せて生活していたという事案もあります。(月収10万円に対し、入居していた老人ホームの月額利用料が15万円)

多少なりとも収入があった事案について生活費の割合が100%以上であったとして逸失利益を否定した裁判例はありません。

事故後に家族構成の変動があった場合
事実審口頭弁論終結前に家族構成に変動があったという事情は、最判平成8・4・25 民集50巻5号1221頁(貝採り事件)の倫理等に照らし、事故当時に家族構成の重大な変動が相当程度に具体的になっていた等の事情がなければ、消極損害である逸失利益の算定において考慮すべきではないと解されています。
 
事故後の家族構成変動を考慮しなかった例として、東京地判平成16・1・20 交民37巻1号80頁、大阪地判平成17・4・1 交民38巻2号558頁があります。
 
名古屋地判平成29・5・19 交民50巻3号630頁は、結婚を約束した女性がいて一緒に住む予定であったことを考慮して、生活費控除率を40%としています。

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