弁護士法人オリオン法律事務所横浜
交通事故被害相談のご案内
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被害者に過失がある場合に、人身傷害補償保険金(人傷保険金)を受け取った場合・・・
※人傷保険金の受取は賠償債務の弁済と同じではなく、被害者過失部分はそもそも賠償債務がないため、「充当」という表現は正確ではありません。正確には、「人傷保険金の額と被害者の加害者に対する損害賠償請求権(過失相殺後)の合計額が、民法上認められるべき過失相殺前の損害額を上回る場合、この上回る額に相当する損害賠償請求(過失相殺後)は、人傷保険金の支払による保険代位によって被害者から人傷社へ移転し、その結果、被害者が加害者に対し有する損害賠償請求権の額が減少する」ことになります。ただし、本サイトではわかりやすさを重視し、場合によっては「充当」と表現します。
被害者が人傷保険金を受け取った場合、相手方保険会社(対人社)に対する賠償にも影響が出るため、被害者・人傷社・相手方保険会社(対人社)の間の関係を慎重に検討する必要があります。
被害者に過失がある場合の考え方は、2012年の最高裁判決で決着はつきましたが、それまでは次のような考え方が唱えられていました。
最高裁は、最も被害者に有利な考え方を採用しました。
具体的には、最判平成24年2月20日民集66巻2号742頁は、裁判基準差額説に立つことを明らかにしています。同判決は、人傷保険金は、被害者が被る実損をその過失の有無・割合にかかわらず全て填補する趣旨・目的の下で支払われるものであることに照らすと、約款中の代位に関する規定は、保険金請求権者が、被保険者である被害者の過失の有無・割合にかかわらず、人傷保険金の支払によって民法上認められるべき過失相殺前の損害額(裁判基準損害額)を確保することができるように解釈するのが合理的であるとして、「上記保険金を支払った訴外保険会社は、保険金請求権者に裁判基準損害額に相当する額が確保されるように、上記保険金の額と被害者の加害者に対する過失相殺後の損害賠償請求権の額との合計額が裁判基準損害額を上回る場合に限り、その上回る部分に相当する額の範囲で保険金請求権者の加害者に対する損害賠償請求権を代位取得すると解するのが相当である。」と判示したのです。
2012年2月当時、人傷保険に関する約款には、人傷保険金の支払額は、人傷基準損害額から、保険金請求権者が賠償義務者から既に取得した損害賠償金の額等を差し引いた金額とする旨の条項がありました。裁判基準差額説を前提として、この約款の条項をそのまま適用すると、過失のある被害者は、人傷保険金を受領した後に加害者に対して損害賠償請求をする場合には裁判基準損害額の填補を受けることができるのに対し、加害者から損害賠償金を受領した後に人傷保険金を請求する場合には人傷基準損害額の填補しか受けることができないことになり、人傷保険金の支払と加害者からの損害賠償金の支払との先後によって被害者側の最終的な受取額に差が生じてしまうという問題点がありました。
そのため、当時は人傷先行といって、人身傷害補償保険の請求を賠償交渉の先に行う必要が実務上生じていました。
現在では、約款の改正により、賠償義務者があり、判決又は裁判上の和解において人傷算定基準と異なる基準で損害額が算出されたときは、人傷保険金支払額の算定において、その基準により算出された額を損害額とみなす旨の読み替え規定が設けられ、これによって、人傷保険金の支払と加害者からの損害賠償金の支払との先後にかかわらず、被害者側の最終的な受取額が同額になるようになっており、上記問題は概ね解決済みです。
人傷保険と賠償金のどちらを先に受け取っても、約款上は、補償額に差が出ないことになりました。
最高裁判決と約款改訂により、約款に基づく人傷保険金支払段階での被害者保護は貫徹されました。
ところが、人傷保険会社が人傷保険金を支払後に自賠責保険金を回収した場合の問題は残されました。
具体的には、過失部分に充当された人傷保険金の支払に基づく代位により人傷社が回収した自賠責保険金が、加害者の損害賠償債務(相手方過失部分)に充当される、という協定を人傷保険金請求時に被害者・人傷社間で締結する実務が定着したのです。
これにより、被害者が受けられる補償額が減少することになりました。
この問題の詳細と、この問題を取り上げた最高裁判決については、別ページでご説明いたします。
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