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被害者の症状に応じた喪失率の認定

後遺障害が認定された場合、等級に応じた後遺障害逸失利益を損害として認定するのが一般的な実務です。

しかし、例外的な対応を検討しなければいけない場合も多くあります。どのような対応が考えられるか、弁護士法人オリオン法律事務所が詳しく解説いたします。

  • 労働能力喪失率の認定方法 → こちら
  • 被害者に減収がない場合の喪失率の認定 → こちら
  • 被害者の職業に応じた喪失率の認定 → こちら
  • 【本記事】被害者の具体的な症状に応じた喪失率の認定
  • 労働能力喪失期間の認定 → こちら
  • 外貌醜状と労働能力喪失への影響 → こちら
  • 鎖骨変形、骨盤骨変形の障害と労働能力喪失への影響 → こちら
  • 脊柱その他の体幹骨の障害と労働能力喪失への影響 → こちら
  • 下肢の障害と労働能力喪失への影響 → こちら
  • 嗅覚・味覚障害、歯牙障害、脾臓喪失と労働能力喪失への影響 → こちら

複数の後遺障害が競合した場合

複数の後遺障害が競合した場合、併合等級が認定されます。この併合の処理は複雑ですが、基本的には、

  • 複数の後遺障害があるときは重い方の後遺障害等級により、
  • ただし、13級以上の後遺障害が複数あるときは重い方の後遺障害等級を1級繰り上げ、
  • 8級以上の後遺障害が複数あるときは重い方の後遺障害等級を2級繰り上げ、
  • 5級以上の後遺障害が複数あるときは重い方の後遺障害等級を3級繰り上げる

こととされています。このような併合の方法によれば、14級の後遺障害が競合する場合、後遺障害等級の繰上げはありません例えば、14級の後遺障害が複数競合する場合は併合14級であり、12級と14級の後遺障害が競合する場合は併合12級となります。

しかし、例えば同じ14級の後遺障害であっても、単一の部位にある場合よりも複数の部位にある場合の方が、労働能力への影響は大きく、ひいては経済的不利益の度合いも大きい場合があるのではないかとも考えられます。

このような考慮をしたと考えられる事例として、次のようなものがあります。

  • 腰椎、頸椎捻挫に伴う疼痛等についてそれぞれ14級10号、不安、うつ状態、パニック症状等の症状につき14級10号に該当し、併合14級とされた被害者の喪失率について10%と認めたもの
  • 頸椎捻挫及び腰椎捻挫後の後遺障害がそれぞれ14級9号に該当し、併合14級である被害者の喪失率について、併合であることに加え、症状の程度や職務の内容も考慮して7%としたも

もっとも、併合14級の事案をみると、労働能力喪失率表どおり、5%の喪失率を認定する裁判例が多数です。個別の事案にもよるが、個々の後遺障害が軽微といってよく、後遺障害別等級表の考え方がそもそも加重しないというものであることからすると、併合14級の場合は5%が原則であると考えるのが一般的なところです。特に、頸椎捻挫と腰椎捻挫が競合する場合には、影響を受ける神経の支配領域が一部重なることからしても、併合であるという理由だけで5%より重い喪失率が認定されることは難しいです。

なお、 これとは逆に、後遺障害が重篤な場合には、併合による繰上げ幅が大きくなるため、これが実態に沿わないという場合も想定し得ますので、そのような場合は別途の考慮が必要です。

喪失率表上は喪失率100%だが、被害者が現に稼働しているか稼働可能なもの

労働能力喪失率表によれば、後遺障害等級3級以上の後遺障害については、喪失率が一律100%とされ、労働能力はないとされています。

しかし、そのような重篤な後遺障害にもかかわらず、被害者が事故後も現に稼働していたり、稼働可能であるという場合もあります。このような場合に、喪失率を100%と認定することは、差額説(事故により生じた経済状態の差額を損害とする)の立場からは説明することができません。

このような観点から、3級以上の後遺障害が残存したにもかかわらず100%を下回る喪失率を認定したものとして次のような事例があります。

  • 3級3号の高次脳機能障害等併合1級の後遺障害に伴う喪失率につき、将来において、日常生活における種々の動作の訓練を積み重ねることで自立できる可能性があることを考慮して95%としたもの
  • 1級3号該当の完全対麻痺の後遺障害に伴う喪失率について、周囲の恩恵的な配慮と本人の多大な努力により勤務を継続できていることを考慮して90%と認めたもの
  • 3級3号該当の高次脳機能障害等併合2級の後遺障害に伴う喪失率について、症状固定後もコンビニエンスストアでアルバイトをしたことがあり、限定的な就労は可能であるとして95%と認めたもの
  • 2級ないし3級の高次脳機能障害に伴う喪失率について、医師が単純な繰り返し作業に限定すれば就労が可能である旨の意見を述べており、日常生活動作も自立していることを考慮して85%と認めたもの
  • 神経系統の機能又は精神に蕃しい障害、右日視力障害・視野障害、左上肢全廃、左膝関節の運動可能領域制限等による併合2級の後遺障害に伴う喪失率につき、障害者枠での採用により正社員として就労していることを考慮し90%と認めたもの
  • 両下肢全廃等1級1号相当の後遺障害を残した公務員の逸失利益について、復職の事実を考慮し、定年まで3年間の喪失率を20%としたもの

弁護士法人オリオン法律事務所のサービス

弁護士法人オリオン法律事務所といたしましては、後遺障害等級認定及び労働能力喪失率表を正確に理解するだけでなく、その限界、等級認定表や喪失率表に縛られない主張・立証により依頼者・ご相談者の利益を最大化することが務めだと考えております。

後遺障害逸失利益についてお困りの際は、弁護士法人オリオン法律事務所までご相談ください。

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